<Header>
<Author: 杜甫>
<Title: 送孔巢父謝病歸遊江東兼呈李白>
<Format: 格式不明>
<Year: 1964>
<BookName: 唐詩選　上>
<Translator: 斎藤晌>
<style: 漢文無假名>
<style2: 日本漢文訓讀無假名標注>
<TranslatedTitle: 孔巢父が病を謝して江東に歸遊するを 送り、兼ねて李白に呈す >
<BookPage: 91>
<UsedPage: 1>
<Feature: 1, 4>
<End Header>
<Poem>
巢父掉頭不肯住，
東將入海隨煙霧。
詩卷長流天地間，
釣竿欲拂珊瑚樹。
深山大澤龍蛇遠，
春寒野陰風景暮。
蓬萊織女回雲車，
指點虛無是征路。
自是君身有仙骨，
世人那得知其故。
惜君只欲苦死留，
富貴何如草頭露。
蔡侯靜者意有餘，
清夜置酒臨前除。
罷琴惆悵月照席，
幾歲寄我空中書。
南尋禹穴見李白，
道甫問信今何如。
<End Poem>
<Translation>
有方者が仕官をすすめるにもかかわらず、巢父は首をふって、この地にとどまろうとしない。東方の海に浮かんで煙霧の深い仙境に歸って行こうというのだ。 友人のあいだに一冊の詩集を置土産にしたが、それが永久に天地の間にとどまるだろう。御本人は飄然として釣竿を手にして珊瑚樹の林にわけ入ってゆく。あちらには高い山や大澤があって、昔から龍蛇を産する地、その遠い彼方に君は去ってゆくのだね。おりしも春まだ寒く、見わたすかぎり野はかげって夕暮れどきのさびしさは格別だろう。しかし蓬來山の織女が龍にひかせた車をわざわざ迎いにまわしてくれて、歸り路には虚無縹緲の仙界へ向かって案内してくれることだろう。それといぅのも君の身には生まれつき仙人の骨相がそなわっているからだが、世間の俗人どもには、とてもその理由を知ることはできないだろう。だから、君が去られるのを惜しんで、なんとかして君をひきとめようと一生懸命になっている。要するに君が立身出世することを、みなが期待しているわけだ。そんな富や貴い身分などというものは、草の葉にやどる露ほどの値打ちもない、はかないものだということに氣がついていないのだ。
ここの蔡君はゆとりのある静かな心境の人物で、巢父の知己として深い心づくしから、かねて酒を用意して清らかなこの夜、庭前にのぞんで宴席を設けてくれた。餘興に弾じていた琴をやめると、いよいよ今宵かぎりお別れかと思えて、なんとなく座がしらけて憂鬱になった。みなが默っていると、明月がさえて、この席を照らすのが目についてくる。今から何年さきになったら、君はたよりを寄せてくれることだろうか。君の行く方向には一足さきに李白が旅立っているが、もし禹穴をたずねて行って、そこらで李白にお逢いでしたら、こういってくれたまえ。「近ごろどうしているかと杜甫が心配してたずねているよ」と。
<End Translation>
<Formatted Translation>
有方者が仕官をすすめるにもかかわらず、巢父は首をふって、この地にとどまろうとしない。
東方の海に浮かんで煙霧の深い仙境に歸って行こうというのだ。
友人のあいだに一冊の詩集を置土産にしたが、それが永久に天地の間にとどまるだろう。
御本人は飄然として釣竿を手にして珊瑚樹の林にわけ入ってゆく。
あちらには高い山や大澤があって、昔から龍蛇を産する地、その遠い彼方に君は去ってゆくのだね。
おりしも春まだ寒く、見わたすかぎり野はかげって夕暮れどきのさびしさは格別だろう。
しかし蓬來山の織女が龍にひかせた車をわざわざ迎いにまわしてくれて、
歸り路には虚無縹緲の仙界へ向かって案内してくれることだろう。
それといぅのも君の身には生まれつき仙人の骨相がそなわっているからだが、
世間の俗人どもには、とてもその理由を知ることはできないだろう。
だから、君が去られるのを惜しんで、なんとかして君をひきとめようと一生懸命になっている。要するに君が立身出世することを、みなが期待しているわけだ。
そんな富や貴い身分などというものは、草の葉にやどる露ほどの値打ちもない、はかないものだということに氣がついていないのだ。
ここの蔡君はゆとりのある静かな心境の人物で、巢父の知己として深い心づくしから、かねて酒を用意して清らかなこの夜、庭前にのぞんで宴席を設けてくれた。
餘興に弾じていた琴をやめると、いよいよ今宵かぎりお別れかと思えて、なんとなく座がしらけて憂鬱になった。
みなが默っていると、明月がさえて、この席を照らすのが目についてくる。
今から何年さきになったら、君はたよりを寄せてくれることだろうか。
君の行く方向には一足さきに李白が旅立っているが、もし禹穴をたずねて行って、そこらで李白にお逢いでしたら、
こういってくれたまえ。「近ごろどうしているかと杜甫が心配してたずねているよ」と。
<End Formatted Translation>